DIRECTOR'S NOTES
 
     

 

 9年間の入賞、入選作家は、のべ300名近くになりました。ご協力いただいたアンケートをもとに、カタログでは皆さんの近況を紹介しています。そこからは、それぞれ活発な活動をされている様子がわかります。ここでは、そのほかのエピソードをすこしだけご紹介します。
 
 今年の入選作家のひとり、兒嶌秀憲さんは、関西をベースに活動する若い写真家です。兒嶌さんは、個展などで精力的に活動をされているほか、MiO写真奨励賞では、'98年、'99年、'01年、'02年、'03年、'05年、そして今年、合計7回の入選と入賞をはたしています。毎年ご応募をいただき、何度も入選や入賞をされた方はたくさんおられますが、なかでも兒嶌さんは群を抜いて最多です。
 
 1999年に優秀賞を受賞した田邉晴子さんは、その個性的な写真表現で、受賞後も精力的に活動をされています。田邉さんは、2004年に天王寺ミオの秋のキャンペーン広告と、クリスマスキャンペーン広告のビジュアルを担当しました。受賞作家と天王寺ミオとのはじめてのコラボレーションです。これからもこのような企画が数多く実現できるように、新たな可能性を探っていきたいと思います。
 
 MiO写真奨励賞は、関西を拠点にしながら、日本各地や世界各国の若い写真家の作品を同じ壁面に飾ることで、互いに刺激を受ける場をつくりたいという願いから、国内と同じように、海外へもプロモーションをしています。チェコの写真家のエヴィジェン・ソベックさんは、2000年に奨励賞(グランプリ)を受賞し、その年と、翌年に開催した展覧会のために、あわせて2度の来日をはたしました。MiO写真奨励賞を通じて知り合った、日本の若い写真家たちと親交を深め、いまもその友情は続いているようです。いま、彼は、ヨーロッパ各国にいる後輩や仲間へ、MiO写真奨励賞への作品応募をすすめてくださっていると聞きます。毎年、チェコをはじめ、東欧各国からのご応募をたくさんいただいているのは、このような人の輪が広がっているからかもしれません。
 
 最近、アジア各国からの応募が増えています。特に、写真を教える学校数が10年間で10倍以上になったという、中国からの応募が急増しています。昨年、中国四川省在住の写真家、アドォさんが奨励賞(グランプリ)を受賞しました。日本にいる私たちにとっても、いろいろな国の若い写真家の作品を見る機会を得られることは、その国の若者の生活や思考を垣間見ることができて、とても興味深いと思います。また、作品を見ていると、それぞれの社会が抱える問題が見えてきたり、互いの文化について知ることができたり、いわば相互理解の役目をはたすこともあると思います。アドォさんは、今年も優秀賞を受賞しました。彼から、「MiO写真奨励賞への応募は、国を越えて各国の同じ世代の写真家と交流できる手段であり、参加できることは、とてもうれしい」というコメントを受けました。
 
 MiO写真奨励賞がはじまったころは、現代美術のアーティストが表現のひとつとして、積極的に写真を使いはじめた時期でした。その影響からか、応募作品にも、立体的なものや、写真とほかの素材とを組み合わせた実験的なものが目立ちました。また、従来のカラーやモノクロ写真に、そのころ急速に普及したカラーコピーが、表現手段のひとつに加わりました。それが、技術の進歩につれて、今では画質の良いデジタルプリントに代わってきました。MiO写真奨励賞が歩んで来た、この9年間でさえも時代の変化がみられ、それが応募作品にも反映しています。しかし、MiO写真奨励賞は、技術の発展や時代のトレンド、流行などに流されることなく、こつこつと作品制作をつづける、若い写真家や写真家の卵を、これからも応援したいと思います。
 
 写真は、その機能がもつ性格上、個人作業が多いと思います。しかし、一人一人がつながっていくと、そこに文化が生まれます。MiO写真奨励賞から、日本中、世界中に伸びていく糸のようなつながりが、これからの新しい時代の文化となることを願っています。
 



MiO写真奨励賞ディレクター
吉川 直哉